岡崎ルネサンス

ルネサンス活動

家康公の本棚

インフォメーション
場所: 岡崎市康生通東2-43
ホームページ: http://www5a.biglobe.ne.jp/~bookhal/
家康公の本棚

 

この5月、東康生通の商店街「東康生町発展会」にある正文館書店の店内に、ユニークなコーナーが誕生しました。その名も「家康公の本棚」。並ぶのは、岡崎を扱った本及び岡崎の人の著作。テーマは、家康公はもちろん、歴史書や野鳥の本、写真集、研究書、オカザえもんの本、花火の絵本など、実に多岐にわたります。 
棚の上部の手書きのポスターには、勢いのある字で「~岡崎を知る 家康公に学ぶ~」と書かれています。

 

 

 

 

 


郷土愛と知識欲から生まれた「家康公の本棚」


「家康公の本棚」は、店主の春井宏之(はるいひろゆき)さん(株式会社正文館書店の取締役社長)の手で作られました。
なぜ「家康公」なのでしょう。そこには春井さんの強い思いがあります。没後400年を経て今なおヒーローであり続ける家康公にならい、岡崎の人たちに未来を見据え、学び続けてほしい。
そのために「町の本屋さんとして知識を提供していきたい」という願いのこもったネーミングなのです。
「買っていただくだけじゃない。読んでいただき、知識を得ていただくことこそ、我々本屋の仕事なんです」
春井さんは情熱的に語ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

知識と情報を発信する場所「町の本屋さん」


「町の本屋さん」。かつてそんな存在があったことを、若い皆さんはご存知でしょうか。
そこは、本を商うだけの場所ではありませんでした。
書架には店主の個性が色濃く打ち出されていました。
本屋さんは町の事情にも通じ、情報発信の場としての役割も担っていました。人々の頭には分からないことがあったら本屋さんというイメージが刷り込まれ、必然的に本屋さんは勉強家で物知りでした。

 

 


漫画や映画にはよく、立ち読み客にハタキをかけるシーンが登場します。でも実際は、見逃してくれるお店も多かったはずです。本屋さんにとってお客は「情報」や「知識」を求める人、言わば"同士"なのですから。

 

 

 

 

「家康公の本棚」には、椅子が置かれています。これは立ち読み客ならぬ「座り読み客」のためのもの。客はゆっくりと本をひもとき、岡崎と向き合うことが出来ます。

 

 

 

正文館書店の「家康公の本棚」は、まさに「町の本屋さん」の様相を呈しているといえるでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


離れて知った、岡崎の素晴らしさ。


 

 


正文館書店は大正11年(1922年)創業の老舗書店です。

創業者は春井宏之さんの祖父、春井利郎(はるいとしろう)氏。春井宏之さんご自身もここで生まれ育ちました。小学生時代の愛読書は『学習子ども百科事典』。全10巻を毎日、日課のように読みふけりました。

 


東北地方の大学に進学した後、春井さんは就職のために東京に居を移します。勤務先は教科書関係の出版社。「本当に偶然に、入れる会社に入っただけ」と春井さんは力説します。しかし心のどこかで「本」がキーワードとなったのではないでしょうか。『学習子ども百科事典』も核になったのではないでしょうか。

 

 

平成9年(1997年)、36才の春井さんは、妻と一緒に18年ぶりに故郷に戻り、㈱正文館書店に入社します。
どうして帰ってきたのか。離れて暮らした18年間が、春井さんに岡崎の素晴らしさを再認識させました。気候風土、環境、住みやすさ。誇るべき歴史的遺産の数々。そして人々の優しさ。
ことに正文館書店があるこの商店街では、人々は何世代にもわたって家族ぐるみの付合いをし、何かあると知恵を出し合い、団結して取り組んできました。

 


「これは、当たり前のことではなかったんですね。
素晴らしい。町の、そして私自身にとっての財産です」

 


離れたことで得た”新たな気付き”が、春井さんの郷土愛に拍車をかけました。町のために役立ちたいという気持ちが芽生えました。その象徴の一つが「家康公の本棚」なのです。

 

 

 

 

 

 

 


出版も行う本屋さん「全国に、岡崎の魅力を発信」


「家康公の本棚」には、正文館書店発行の本も並びます。正文館書店は出版社をも兼ねているのです。
「出版も行う本屋さん」であることに、春井さんは強い意義を抱いています。
目的の一つが、本を制作しようとする人のサポートをするため。
そしてもう一つは、流通により、岡崎の魅力を全国に発信するためです。

 


[正文館書店出版・発行の本、第一号 エピソード]
正文館書店出版の記念すべき第一号は『CULTIVATE 岡崎散歩 二十七曲りへの旅』(2013年 ふるかはひでたか著)。帯に「岡崎発掘!取材日記 CULTIVATE『岡崎散歩』二十七曲りへの旅」とあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


この『岡崎散歩』に春井さんがはじめて出会ったのは、あいちトリエンナーレ(3年に1回開催される現代アートの国際芸術祭)岡崎会場でのプレイベントの会場。美術家・ふるかはひでたかさんはそこに、自作の『岡崎散歩』8冊を展示していました。
テキストは手書き。製本も糸かがりの完全なる手作りの一冊は、偶然手にした春井さんを一気に魅了しました。「屋台の誘惑‐岡崎公園」、「レトロ館と電車通り‐本町通り」、「思い出ハヤシライス‐岡ビル」etc。
美術家のユニークな視点で描いた風景は、春井さんの「当たり前」を覆しました。
「見方を変えると、岡崎は、こんなに面白いんだ!」

 

 

会場に二日間通って完読し、春井さんは決めました。

 


「ふるかはさん、これ、出版しませんか?」

 


いずれ出版事業を始めたいと考えていた春井さんにとって、これは千載一遇のチャンスでした。運命的な出合いとも言えます。
片やイベント会場で突然、見も知らぬ人(春井さん)にそう言われ、ふるかはさんは、どれだけ驚いたことでしょう。


「まさに鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしてみえましたよ」

 

 

 

 

 

 

 

 


本を作るということ。「一冊」にこめられた思い


本を作るのは大変な作業です。労力は、並大抵のものではありません。たった一文字で意味が全く変わってしまうことさえあります。情熱だけでは出来ません。出版元も、原稿をそのまま印刷・製本するだけでは責任を果たしたと言えません。正文館書店発行の本は、春井さんもプロとして制作に加わります。

 

 

「作家は創作への情熱を核に、情報を収集し、精査し、文章を練り上げます。その凝縮形が一冊の本なんです。
ちゃんと作った一冊は、絶対に深いんです。面白いんです」
春井さんは「一冊」を作者と共に編み出すことを楽しんでいるのです。その原動力は、郷土愛。そして知識欲ではないでしょうか。

 

 

今後の夢を伺ったところ
「もっともっと勉強したいね。そして知識をどんどん提供したい。あっ、『町の本屋さん』であり続けるってことか!」

 

 

 

家康公の本棚が、これからどう発展していくのか、どんな本が並べられるのか、楽しみです。

 

 

 

 

【掲載日:平成29年6月16日】

 

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