岡崎ルネサンス

ルネサンス活動

土の地産地消

インフォメーション
場所: 岡崎市上青野町稲前東23
ホームページ: http://www.sankyo-kensetsu.jp
土の地産地消

町おこしが盛んになり、地域色の重要性が認識されるようになった昨今。しかし、地域の土の色そのもののを意識したことのある人は、多くはないのではないでしょうか。
「町の色は土の色」と、建築家のであり地元岡崎市の工務店、(株)山共建設の社長である山本寿仁(ひさと)さんはおっしゃいます。
もともと日本の建築物の面を構成する壁は、ほとんどが地域の土で作られてきました。土壁です。
土の色は地域によって実に多様です。また屋根も多くが地域で焼いた瓦で葺かれ、その集合体が村であり町の独自の色、景観を成して来たのです。

逆に言えば、町をコンクリートとアスファルトに覆った現代社会は、地域の色をないがしろにして来たとも言えます。

土壁自体も、新建材の台頭により廃れつつあります。これに歯止めをかけ、復興させるための運動に取り組んでいるのが、山本さんです。
今日は、山共建設さんの実験ハウス「さんじゅ荘」で話を伺いました。

 

 

 

 

 


地元の自然素材と人々の創意工夫により生まれ、育まれてきた土壁

土壁はその名の通り、土で出来た壁です。他に材料として水とレキ(砂利、小石)、そしてスサと呼ばれる藁や麻などの植物でを加えます。いずれも特別な材料ではありません。どこにでも普通にあります。

 

先人達はこれらを材料に、創意工夫を重ねて土壁を作り上げてきました。
例えばレキを加えるのは、ひび割れを防ぐためです。スサは植物繊維がつなぎの役をし、また塗りの際にコテの滑りをよくします。他に材料の配分や捏ね方など、教科書があったわけではなく、自分達の頭で考え、体で技を掴み、土壁建築を編み出して来ました。

 

こうした背景をもとに発展してきた土壁は、建材として素晴らしい作用を有します。最たるものは調湿効果です。湿度が高いと水分を吸収し、低いと壁の中の水分を放出し、室内の湿度を一定に保とうとします。これを山本さんは「壁が呼吸する」と形容します。土壁は高温多湿の気候風土において、天然のエアコンの役を果たしてくれるのです。

 

しかし昨今の建築現場において土壁は新建材に取って代わり、これは左官技術の衰退をも意味します。
「有史以来、連綿と培われてきた技が、今ここで絶たれていいのか」
土の地産地消は山本さんにとって、土壁建築と左官技術の継承、そして地域の土を活かし続けることなのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さんじゅ荘に置かれたコテ

 

 

 

 

 

 

 


岡崎にも多くの壁土が産出します。特徴として山本さんは、色の鮮やかさを挙げ、「もしかしたら花崗岩の影響ではないか」と考えてみえます。岡崎は名だたる花崗岩の産地ですが、こうして地域の土の色にも影響しているとしたら、嬉しい限りです。
さんじゅ荘には多くの土のサンプルがあります。拝見すると色合いや表情、素材感の多様さに驚かされます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さんじゅ荘内の壁に塗られた土。すべて同じ三河産の土ですが、白土を混ぜることで微妙に色合いが変わります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

土のサンプル。顔料などを一切含まない天然の土の色です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


山本さんご自身が採取した県内産の土。こんなにさまざまな色があるとは驚きです。

 

 

 

 


土壁建築を守って行く決意

山本さんは上青野町の左官屋を生業とする家に生まれ育ちました。周辺には一面に田んぼが広がり、毎日のように泥んこ遊びに興じました。家に帰れば、すぐ手に届くところに左官道具や色土がありました。ご近所の瓦職人のお宅で、瓦粘土と壁土と田んぼの土の違いに驚くなど、土と身近な幼少期を過ごしました。

 

そんな山本さんが、土壁の普及に本格的に取り組むようになったのは1993年、アジア最大級の店舗総合見本市「JAPAN SHOP(日本経済新聞社主宰)」に出展したことがきっかけでした。名だたる大企業が新建材や斬新な製品が展示する中、山本さんと友人2名が「ネイチャーを形にする」をテーマに出展したのは、土壁で作った穴倉のような空間でした。
これが何と、商環境デザイニング部門で建築大臣賞を受賞したのです。
「ただの土の塊なのに、こうして人々の注目を集めたのは、自分にとっての当たり前の存在である土壁が、世間では実は当たり前ではなかったということだ。やはり、残していくべきなんだ」
この気付きが、漠然と抱いていた現代建築への疑問と、土壁再興への思いに拍車をかけたのです。

 

 

 

 

 

 


次世代に土の地産地消を受け渡す

土壁のもう一つの大きな特徴は、環境負荷がないことです。材料はすぐそこに存在します。わざわざ化石燃料で作る必要はありません。
建物を解体処分する際も、新建材が産業廃棄物となるのに対し、大地に戻せばそのまま土に還ります。
「土は、大地からの贈り物だ。我々はありがたく使わせてもらっているに過ぎない」と山本さんはおっしゃいます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


さんじゅ荘裏手に盛られた壁土用の土。さんじゅ荘もいつかまた土に還ります。

 

 

 

しかしこうした特性は、ほとんど知られていません。ましてや現代の子ども達は、土は汚いものという感覚を持ち、触れたことすらない子も多いのではないでしょうか。
「土壁により、子ども達に環境負荷のない世界を受け渡すことは、建築屋としての責務だ」
そこで山本さんは、まずは子ども達に土に親しんでもらおうと、どろんこハウス作りや泥団子教室を開いています。これがいずれは土の地産地消に結びつくかというと、随分と気の長い話です。もしかしたら山本さんご自身が、いつまでも泥んこ遊びを続けていたい、ということなのかも知れません。

 

 

 

 

 

 

 

 

泥団子教室

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敷地内のツリーハウス、山本さんはこの上にもどろんこハウスを作ることを考案中です。

 

 

 

【掲載日:平成29年11月28日】

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