岡崎ルネサンス

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カワラカルチャー

インフォメーション
場所: 岡崎市牧平町字大門45番地
ホームページ: http://www.miuraengei.com
カワラカルチャー

岡崎発、ハイドロカルチャーの新しいカタチ


 ハイドロカルチャー、「水耕栽培」。土を使わない栽培方法の一種です。最近ではこの栽培方法で育てられた観葉植物自体を、総じてハイドロカルチャーと呼ぶ人も少なくないのではないでしょうか。
 名称をご存知なくても、きっと多くの方が目にしていることでしょう。花屋さんやホームセンター、インテリアショップや雑貨店で。喫茶店やホテル、そして病院に置かれることも。もしかしたらあなたのお宅の窓辺にも飾られているかも知れませんね。
 水栽培と違うのは、「ハイドロコーン」をはじめとした、保水力と通気性の高い清潔な園芸用土を使用している点です。汚れや根腐れ、害虫の心配が少なく、水やりの回数も少なくて済む手軽さから、「室内で観葉植物を育てたいけど、手入れが面倒で…」といった人のみならず、多くの需要があります。
 その代表的な用土「ハイドロコーン」は、主にオランダからの輸入に頼ってきました。しかしここ岡崎に、オリジナルの園芸用土を開発した人がいます。瓦メーカーとのコラボにより生まれた、その名もカワラカルチャー、Kawara Culture。
 試行錯誤を繰り返し、ついにカワラカルチャーを完成させ、さらに次なるチャレンジに意欲を燃やす(有)三浦園芸の代表取締役 三浦基彰(みうらもとあき)さんに話を伺いました。

 

 

 

 



 
 
温室の連なる山合いの風景


 岡崎市牧平町。小高い丘に登ると、雑木林の向こうに温室の屋根がキラキラと光り連なるのが見えます。本日の取材先、三浦園芸の本社と温室の屋根です。
 

 


 
 
 敷地内に降り立つと、いい匂いが漂っています。辺りの自然が織りなす香りでしょうか。それとも三浦園芸で栽培される観葉植物が放つ香りでしょうか。
 「えっ、そうですか!? いやいつものことなので…」
 ちょっと驚いた顔をなさった三浦さん。いえ、この自然豊かな地に生まれ育ったことは、三浦さんにとって、そしてここで栽培される観葉植物達にとっても、かけがえのない財産であるはずです。

 

 

 


 
 

 
 
 温室内では膨大な数の観葉植物が大切に育てられ、出荷を待っています。
 それにしても広大な施設です。
 「いや、国内外の委託農場も合わせると、65ha(東京ドーム約14個分)に及ぶんですよ」
 三浦さんが胸を張ります。植物の種類も130品目に及ぶとか。
 
 実は愛知県の花の生産量は53年連続で日本一。観葉植物も日本一の産出額を誇る植物大国なのです(平成26年度 愛知県農林水産部園芸農産課内 愛知県花き温室園芸組合連合会)。ハイドロカルチャーも例外ではありません。ほとんどを県内の2社が生産出荷し、そのうち1社が岡崎市に本社を置く三浦園芸なのです。
 
 三浦さんは平成16年(2004年)に 第34回日本農業賞で大賞を受賞。日本農業のトップランナーの一人として認められました。
 さらに平成17年(2005年)には、 第44回農林水産祭において天皇杯を受章。授賞式では天皇陛下ともお話しされたそうですが、上がってしまってその時の記憶はあまりないそうです。

 

 

 

 


 
 
 
「人工イクラの製造方法にヒントあり!?」。カワラカルチャー誕生秘話


 カワラカルチャーが誕生したのは、偶然の出合いからでした。
 市内信用金庫で開催された経営塾「塾生会」で、三州瓦のメーカーさんから「瓦の端材を何か利用できないだろうか?」と持ちかけられたのです。
 三州瓦といえば江戸時代から続く伝統産業。地域ブランド(地域団体商法)にも認定されています。丁度、新しい園芸用土を開発できないかと考えていた三浦さんにとって、またとないチャンス到来です。
 しかし、どうやって作ったらいいのでしょう。見当もつきません。塾生会で紹介された大学教授に相談したものの、先生にとっても初めての課題です。簡単に答えが導き出されるはずもありません。何度も話し合いを重ねるうちに、工学博士である先生が閃いたのが…。
 「もしかしたら、人工イクラの製造方法にヒントがあるかも知れません。アルギン酸ナトリウムと塩化カルシウムの作用によって…」
 瓦屋さんと三浦さんの挑戦が始まりました。そしてついに誕生したのが、廃材利用率65%以上の国内初のリサイクルコーン「カワラカルチャー」なのです(2010年、経済産業省の地域産業資源活用事業計画に認定)。
 「先生も喜ばれたでしょう」との問いに、三浦さんは当時を思い出したかのように「はい、それはもう…」と感慨深げに答えてくださいました。

 

 

三州瓦の端材を粉末状にし、顔料を加えてよく練り合わせます。

 

穴の空いたトレイに流し込むと、雫のように溶剤が落ちてきます。

 

 

これを特殊な反応液の入った水槽に落とすと、リサイクルコーン「カワラカルチャー」の完成です。

 

 

 

 

 

カワラカルチャーを世界に


 カワラカルチャーは粉末状にした三州瓦の端材と、食用にも使用される顔料を合わせて作られます。
 6色の愛らしい粒々。色鮮やかですが、不思議と植物の緑と馴染みます。
 
 

 


 
 
 
 
 
 
 
 また保水部分と乾燥部分の色が変化するため、水やりのタイミングが明確に分かります。
 美しさと栽培の手軽さが受け、海外からも多くの引き合いがある三浦さんのカワラカルチャー。
 「もともとヨーロッパで確立した園芸方法で、父・三浦 正も本場オランダで学びました。
 今度はこちらから発信する番です」
 瓦という日本の建築資材を使い、新しいハイドロカルチャーのカタチを創造する三浦さん。
 日本家屋においても、建物の屋根と同じ材質でできたカワラカルチャーの提案を考案中です。同じ建材が、屋外では屋根瓦として住人を守り、室内では癒しをもたらしてくれるのではないでしょうか。
 三浦さんの夢は際限なく広がります。
 
 
 
父の背中、植物を愛する心、創意工夫の精神


 ハイドロカルチャーの未来を創造すべく力強く邁進する三浦さん。そこには大きく二つの影響がありました。
 一つに父・三浦正さんの存在です。
 正さんはもとは工作機器メーカーの社員でした。しかし生来の園芸好きが高じ、就農への思いが絶ち難く、長男・三浦基彰さんの誕生を期に退社。2年半の洋蘭農家での研修を経て、昭和47年(1972年)より、当時としては珍しかったシンビジウムの栽培を開始します。それも必要な設備や施設を可能な限り手作りして。工作機器メーカーで得た技術を活かしたとはいえ、試行錯誤を繰り返し、ビニールハウスやボイラーを自作する正さん。そしてシンビジウムを愛し、語りかけ、まるで貴婦人と接するかのように大切に育てる父の姿を、幼かった三浦さんのピュアな瞳が見つめていました。
 その後、これも当時としては珍しかった観葉植物にシフトした後、正さんがハイドロカルチャーに着目したのは昭和57年(1982年)。ヨーロッパでの視察の際に目にし、「これなら清潔好きな日本人に受ける、病院にも置けるはずだ!」と閃いたのです。
 実は、土植えの観葉植物は病院には設置出来ません。しかしハイドロカルチャーなら、もっとも癒しを必要とする人たちに、植物の安らぎをもたらすことができます。そして栽培の手軽さから、一般でも受け入れられるはすだ、と。読みは当たり、需要が高まり、正さんは日本におけるハイドロカルチャーの先駆け的存在となりました。
 
 カルチャーは多くは文化と訳されますが、もとは農耕、「耕すこと」が語源です。
 正さんはまさに、「耕すこと」と文化が一体化した人でした。

 

 

 

 


 
 
 水・ハイドロと、カルチャー「耕す」ということ


 また、ハイドロカルチャーのハイドロhydroは、「水」を意味します。
 三浦園芸のハイドロカルチャーの特徴は、地下水(※一部水道水使用)で栽培されていること。
 三浦さんによると、植物はほぼ90%が水で形成されているとか。三浦園芸のハイドロカルチャーは、自然豊かな牧平町の滋養たっぷりな地下水で育てられています。
 またボイラー等の燃料の多くは、地元の間伐材を使用しています。化石燃料の使用をおさえることでCO2の削減につながり、また地域の林業の活性化にも加担しています。ここに、生まれ育ち、学び遊んだ古里の自然を大切に守りたい、という三浦さんの願いが込められているのです。
 
 


 
 
 
 古里の水・ハイドロと、父・正さんの創意工夫の精神を受け継ぐ三浦さんがカルチャー・耕し続けることで、新しい園芸文化を紡いでいるのかも知れません。
 手にしたハイドロカルチャーを見つめる瞳は、慈愛に満ちています。3年前に他界した正さんがシンビジウムに向けた眼差しも、同じように暖かかったのではないでしょうか。

 

 

 

【掲載日:平成30年3月6日】
 

 

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