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明治時代から続く大門のしめ縄

インフォメーション
場所: 愛知県岡崎市大門1-13-5(一般の人の見学は不可)
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明治時代から続く大門のしめ縄

あいちの伝統工芸品に認定、そして愛知県の地域産業資源にも指定されるなど、岡崎市を代表する伝統産業として知られる大門のしめ縄。今年も秋に入った頃から本格的なしめ縄づくりが始まっています。繁忙期のピークを迎えている「大門〆縄組合」を訪ね、つくり手のこだわりや思いなどを聞きました。

 

 

 


約130年も前から続く
大門地区の伝統産業


 岡崎市の大門地区でしめ縄づくりが始まったのは、今から130年ほど前。明治20年代に、大門地区の石川米吉さんが三重県の伊勢神宮を訪ね、しめ縄づくりの技術を持ち帰ったのが始まりといわれています。その後、戦前の昭和10年代から需要が拡大。戦後の昭和25年に現在の「大門〆縄組合」が設立されました。
 そもそも、なぜ大門地区でしめ縄づくりが盛んになったのでしょうか? その理由のひとつには、矢作川から近いという地理的なメリットがありました。
 「この辺りは、矢作川が大きく西にカーブを描いているところ。川の東岸に広い砂州があり、当時はしめ縄用の稲わらを大量に乾燥させることができたんです」
 「大門〆縄組合」の組合長、蜂須賀(はちすか)政幸さんが教えてくれました。

平成28年から組合長を務めている蜂須賀政幸さん

 

 


 現在、「大門〆縄組合」に所属しているのは大門学区内の7軒。しめ縄づくりは各戸の作業場で行われています。

蜂須賀さん宅の作業場

 

 


 「最盛期の昭和50年代には、全部で30~40軒が組合に入っていたのですが、今はだいぶ減ってしまいましたね」と話すのは、蜂須賀さんの父で、元組合長の蜂須賀冨男さん。昭和23年頃からしめ縄づくりに携わってきたという大ベテランです。

平成3年から平成7年まで組合長を務めていた蜂須賀冨男さん。現在も政幸さんと一緒に作業を行っています

 

 


 毎年のしめ縄づくりは正月明けからすぐに始まります。最初の作業は、紙垂(しで)などの飾り物や、大きなしめ縄に使う芯をつくること。ちなみに大門のしめ縄は、中身の芯まで稲わらでつくられているため、使い終わった後は燃やすことも可能。環境に優しい点も特徴です。

下が芯。前年に残った材料を無駄にしないよう、有効活用してつくります。上は芯が中に入った状態

 

 


 そして春を待ってから、しめ縄用の稲づくりに取り組みます。稲は「東海千本(とうかいせんぼん)」と古代米の2種。どちらもしめ縄専用の品種で、一般には流通していないため、モミ撒きから独自に行います。
 「米用の稲は、風害を防ぐために背の低い品種が主流。でもしめ縄をつくるには、背の高い稲わらが必要になってくるんです」と政幸さん。
 組合員1軒あたりが担当する田の広さは2~3反ほど。他所で購入できる品種ではありませんから、こまめに草刈りを行うなど、細心の注意を払って育てます。そして稲が成長した7月から8月にかけてが刈り入れ時期。米が実る前に刈ってしまうため、稲わらはきれいな緑色をしており、この鮮やかな色合いが大門のしめ縄の大きな魅力になっています。

刈り入れ後に乾燥させた稲わら。青々とした色が美しい!

 

 


 毎年、刈り入れの時期を迎えた後は、早朝からの作業が続きます。まず朝日が昇る前、午前3時頃に乾燥の終わった稲わらを乾燥機から取り出し、田に出向いて刈り入れを行います。そして刈り入れた分をすぐ乾燥機へ。なお、昭和50年代以降は、川岸の天日干しではなく、タバコ用の乾燥機を使用しているとか。乾燥の済んだ分から、しめ縄づくりを始めていきます。

 

 

 


約35万本のしめ縄を
1本ずつ手づくりする


 現在、「大門〆縄組合」でつくっているしめ縄の種類は約25種。もっとも生産数の多い水回り用の「◯〆(わじめ)」を始め、玄関飾り用の「小玉」や「大玉」、神棚用の「五社」や「間縄(んなわ)」、事業所などで使われる「特々大根」や「特々大玉」など多岐にわたります。

高さ50センチの「特大玉」から27センチの「小玉」まで、さまざまなサイズがあります

一番右が「特々大根」。高さ65センチ、幅80センチという大きさです

神棚用の「五社」。ほかに大きめの「三尺五社」や房が3つの「三社」などもあるとか

リース型のしめ縄もつくっています

 

 


 政幸さんに「◯〆」のつくり方を実演していただきました。まず少量の稲わらを手にとり、霧吹きを使って湿らせます。

水で湿らせると、稲わらが柔らかくなってないやすいとか

 

 


 そして、湿らせた稲わらを2束に分けてから、片端を足で押さえ、両手を使ってこすり合わせます。

30~40センチの稲わらをなう時間は、わずか30秒ほど! かなりの早技です

見事になわれた状態。見ていると簡単そうですが、熟練の技術が要求されます

ちなみにこちらは初心者がなったもの。網目の細かさがまるで違うのがわかります

 

 


 そして、なわれたものをくるくると丸めて玉じめに。この行程も、きれいな丸をつくるためには長年の経験が必要とか。なお、完成した分は、出荷が始まるまで、光を遮断して除湿された部屋で保存。鮮やかな色合いが保たれます。

政幸さんにかかれば、玉じめができるまでもあっという間

 

 

 


 今年の生産数は、全種類を合わせて約35万本。組合員1軒あたりで5万本を担当する計算です。なお、毎年秋には全組合員が集まる「目揃い会」を実施。それぞれの種類ごとの規格を統一するため、太さや長さなどの確認を念入りに行っています。

各戸に置いてあるという長さや太さの見本

 

 


 そして出荷が始まるのは11月頃から。1本ずつを手づくりしているので、時間はいくらあっても足りません。「1年あたりの生産量は、最盛期と比較すれば減少していますけど、その分だけ組合員も減っています。そう考えると、むしろ今のほうが1軒あたりの生産数は多いかもしれません」と政幸さん。毎年、夏から12月中旬にかけては、ほとんど休む暇もないという忙しい日々が続きます。

 

 

 


地域の大切な伝統産業を
後世に引き継いでいきたい


 農林産物の品質の向上及び、市場や消費者から信頼される産品となることを目的とした岡崎市のブランド化推進品目にも指定されている大門のしめ縄。現在でも愛知県下で国産しめ縄トップのシェアを誇ります。「しかし、今後の課題がないわけではありません」と政幸さん。なによりも後継者の確保と育成が急務です。組合では、地域の子どもたちにしめ縄の魅力を知ってもらおうと、毎年秋に大門小学校でしめ縄体験活動を実施。今年も9月に行われ、100人以上の児童がしめ縄づくりを体験しました。
 また、12月上旬には、大門小学校の児童と地元団体が大門駅に集まり、交通安全広報活動として、しめ縄の配布も行われます。

岡崎市農林産物ブランド化推進シンボルマーク。マスコットキャラクターの「オカボー」は、麦わら帽子をかぶったオカザキの男の子をイメージしています

1つずつ丁寧に袋詰めされたしめ縄

 

 

 


 「大門〆縄組合」の今後の目標は、古くから地域で育まれてきたしめ縄づくりの技術を後世に継承していくこと。「大門のしめ縄は、色や形のきれいさなど、手づくりにこだわった品質の良さが自慢」と政幸さん。「この伝統工芸品を、これからも大切に守り続けていきたい」と力強く話してくれました。

 

 


地元のしめ縄で良い年越しを!


 今年も残すところ約1か月。しめ縄には神聖な領域をほかと区別し、周囲の汚れを清め、災いなどの侵入を防ぐという意味があるそうです。ぜひ皆さんも、地元で手づくりされた大門のしめ縄を飾って、年越しを迎えてみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

 

◯取材協力:大門〆縄組合(所在地:愛知県岡崎市大門1-13-5)

      蜂須賀政幸(電話:080-5112-8229 メール:primrose@catvmics.ne.jp)

 

◯大門のしめ縄data
主な販売店:おかざき農遊館や市内の農産物直売所のほか、大型量販店などで購入できます

 

◯関連学区まちものがたりリンク
大門学区  大門学区まちものがたり

 

◯ライター:藤原均

愛知県名古屋市出身。平成29年の春まで岡崎に住んでいましたが、事情があって泣く泣く転居。市内のフェイバリットスポットはLibra! 転居したことで、広さやきれいさ、蔵書量などLibraの素晴らしさをあらためて実感しています。

 

◯掲載日
2017年12月1日

 

 

 

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